この記事の要点: Claudeに決算書や試算表を渡すと、財務指標の計算・業界水準との比較・経営課題の言語化を手伝ってくれます。筆者は静岡の物流(倉庫)会社の現役社長で、Claude Codeを「AI室長」とする経営企画チームを実際に運用し、決算書・試算表の分析と各機能の戦略立案を任せています。実際の経営データと出力は非公開のため、本記事に登場する財務数値はすべて架空のサンプルですが、手順とプロンプトはそのまま使える形で解説します。
「決算書は税理士に任せておけばいい」と思っていた時期が、私にもありました。
毎年決算書を見せられても、税理士の「今期は問題ありません」という言葉をそのまま受け取るだけ。数字を自分で読めない経営者は、自社の健康状態がわからないまま経営しているようなものです。
私は静岡で物流(倉庫)会社を経営しています。いまはClaudeを軸にしたAI経営企画室を社内で運用しており、決算書や試算表の分析はその中心的な仕事のひとつです。この記事では、その実践から得た「決算書をAIに読ませる具体的な方法」を解説します。
先にお断りしておきます。当社の実際の経営データと実際の出力は公開できません。本記事に登場する財務数値は、すべて架空のサンプル企業の数値例です。その代わり、手順とプロンプトは私が日常的に使っている型をそのまま示します。
この記事でわかること
P/L・B/S別プロンプトの書き方・出力を引き出す手順については → AIへの決算書の渡し方【ClaudeとChatGPTで財務分析する具体的プロンプト】 もあわせてご覧ください。
なぜ決算書をAIに読ませるのか
理由はシンプルで、経営者が「自分で問いを立てられる」ようになるからです。
税理士の報告を聞くだけの決算は、いわば健康診断の結果を医者に読み上げてもらうだけの状態です。「問題ありません」と言われれば安心しますが、どの数字がなぜ問題ないのか、来期どこを動かせば利益が増えるのかは、自分の頭には残りません。
AIに決算書を読ませると、この構図が逆転します。
AIは経営者の代わりに判断してくれるわけではありません。しかし「数字のどこを見ればいいか」「何を質問すればいいか」を教えてくれる相棒としては、月額数千円とは思えない働きをします。
筆者のAI経営企画室【実話】
ここは私の会社で実際にやっていることです。
当社では経営企画チームを組成し、Claude Codeを「AI室長」として任命・運用しています。AI室長の下には、
の6つのチームがあり、それぞれの領域の分析と戦略立案をAIに担わせ、その結果をもとに経営判断を私が下す、という回し方をしています。決算書や月次試算表の分析は、このうちファイナンス・アカウンティング領域の中核業務です。
AIの活用は財務にとどまりません。会議の議事録はボイスメモ→文字起こし→Claudeという流れで担当者が運用していますし、2025年には約2,500万円をかけて自社の倉庫管理システム(WMS)を開発しました。「AIを試してみた」段階はとうに過ぎて、経営のインフラとして組み込んでいる、というのが実態です。
繰り返しになりますが、この体制で扱っている実際の経営データ・実際の出力はお見せできません。そのため、ここから先の数値例はすべて架空のサンプル企業のものです。手順とプロンプトの「型」は、私が日々使っているものと同じです。
決算書分析の実践手順
Step 1:何を渡すか決める
最初は欲張らず、この2つで十分です。
慣れてきたら月次試算表・資金繰り表・部門別損益と広げていきます。
Step 2:データの渡し方(PDF・CSV・テキスト)
Claudeには決算書PDFをそのまま添付できます。会計ソフトからCSVで書き出せる場合はCSVの方が数字の読み取りが確実です。どちらも難しければ、主要な数字だけを手入力したテキストで十分です。
架空のサンプル企業で、テキスト入力の例を示します。
損益計算書(単位:万円)※架空のサンプル
売上高:42,000 / 売上原価:28,500 / 売上総利益:13,500
販売管理費:10,200 / 営業利益:3,300 / 経常利益:3,070 / 当期純利益:2,150
貸借対照表(単位:万円)※架空のサンプル
流動資産:8,200(現金預金2,800 / 売掛金4,100 / 棚卸資産1,300)
固定資産:12,500 / 資産合計:20,700
流動負債:5,600(うち短期借入金2,500) / 固定負債:6,800
純資産合計:8,300
この粒度で、財務指標の計算と課題の言語化には十分足ります。
Step 3:機密情報の扱い【重要】
決算書は機密のかたまりです。渡す前に必ず以下を検討してください。
コピペで使えるプロンプト例
私が使っている型をベースにしたテンプレートです。[会社の状況]の部分をご自身の情報に差し替えてください。
①決算書の健康診断(最初の1回目)
私は中小企業の経営者です。以下は当社の決算書データです。
財務の専門知識がなくても理解できるように、次を教えてください。
1. この決算書の「良い点」3つ
2. 「問題点・注意点」3つ(それぞれ深刻度つきで)
3. 特に注目すべき財務指標と、その読み方
4. 来期に向けた改善の優先順位
5. 銀行から見たこの会社の評価
専門用語には必ず簡単な補足をつけてください。
[決算書データを貼り付け]
②財務指標の計算と業界比較
以下の決算書データから、売上総利益率・営業利益率・流動比率・
自己資本比率・売掛金回転日数を計算してください。
計算式と計算過程も示してください。
その上で、[業種名]の一般的な水準と比べた評価を教えてください。
業界水準はあなたの推計であることを明示し、確認すべき公的統計があれば挙げてください。
[決算書データを貼り付け]
たとえば先ほどの架空サンプルなら、売掛金回転日数は「売掛金4,100万円 ÷ 日平均売上(42,000万円÷365日)≒ 約36日」と計算されます。この日数が業界水準より長ければ、回収条件の見直しという論点が立ちます。この数値はあくまで架空サンプルの計算例です。
③問題点の深掘り
先ほど指摘してもらった「[指摘内容]」について深掘りします。
1. 考えられる原因を、可能性が高い順に挙げてください
2. 中小企業で一般的な改善策を、着手しやすい順に教えてください
3. 改善の効果をどの指標で測ればよいですか
④銀行目線でのレビュー
あなたは地方銀行の融資担当者です。
この決算書を融資審査の観点でレビューし、
「融資判断でプラスに働く点」「懸念される点」「経営者に確認したい質問」
をそれぞれ挙げてください。
[決算書データを貼り付け]
⑤月次試算表の定点観測
以下は当社の月次試算表です。前月・前年同月と比べて
変化が大きい項目を挙げ、それぞれ「確認すべき問い」を作ってください。
[試算表データを貼り付け]
⑤を毎月回すだけで、決算のときに初めて数字と向き合う経営から、毎月数字で考える経営に変わります。
注意点:AIの分析は「仮説」である
実運用して痛感している注意点です。
①計算は必ず検算する
Claudeの四則演算は基本的に正確ですが、項目の読み違い(経常利益と営業利益の取り違えなど)が起きることはあります。重要な指標は電卓かExcelで検算してください。
②業界平均・統計値はハルシネーションを疑う
「業界平均は○%です」という出力は、AIの学習データに基づく推計であり、実在の統計と一致する保証はありません。中小企業庁の中小企業実態基本調査など、一次情報での裏取りを習慣にしてください。プロンプト②のように「推計であることを明示して」と指示しておくと安全です。
③AIの分析は仮説、最終判断は経営者
AIが出すのは「こう読める」「ここが論点になり得る」という仮説です。当社のAI経営企画室でも、AIの分析はあくまで判断材料であり、意思決定は必ず私が行っています。仮説を鵜呑みにした経営判断は、AI活用ではなくAI依存です。
④税理士との役割分担
税務申告・節税・会計処理の正誤判断は税理士の領域です。AIは「理解する・問いを立てる・仮説を作る」まで。AIで予習してから税理士に相談すると、打ち合わせの質が目に見えて上がります。
よくある質問(FAQ)
Q. 決算書の数字をAIに見せても大丈夫ですか?
A. 会社名・代表者名・取引先名など識別情報を除いて渡すことをお勧めします。加えて、有料プランの学習利用設定など、利用するプランのデータ取り扱いポリシーを必ず確認してください。不安が残る場合は桁変換という方法もあります(本文Step 3参照)。
Q. Claudeの財務分析はどこまで信頼できますか?
A. 指標の計算や決算書の構造の説明は実用レベルです。ただし業界平均などの統計値は推計が混ざるため一次情報で裏取りし、税務判断は税理士に確認してください。分析結果は「仮説」として扱うのが正しい距離感です。
Q. 記事内の数値例は筆者の会社のものですか?
A. いいえ。筆者の実際の経営データと出力は非公開のため、本記事の財務数値はすべて架空のサンプル企業の数値例です。体制・手順・プロンプトの型は筆者が実際に運用しているものです。
Q. 毎月の月次試算表でも使えますか?
A. はい。むしろ年1回の決算書より、毎月の試算表を定点観測する方が効果は大きいです。プロンプト⑤をそのまま毎月使ってください。
Q. どのClaudeプランが必要ですか?
A. 無料版でも基本的な分析は可能ですが、決算書PDFの添付や長いデータのやり取りを考えると、Proプラン(月額約3,000円)が現実的です。
Q. 中小企業でも「AI経営企画室」は作れますか?
A. 最初から6チームは不要です。まず「決算書と試算表をAIに読ませて、経営者が問いを立てる」だけで、経営企画機能の第一歩になります。体制はそこから育てれば十分です。
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まとめ
税理士の報告を聞くだけの決算から、数字で自分の会社に問いを立てる経営へ。その最初の一歩として、次の決算書が来たらプロンプト①をコピペして試してみてください。
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📓 筆者の実録noteマガジン
この記事の筆者は静岡の物流会社の現役社長。コードを1行も書かずに、AIだけで社内の仕組みづくりと副業を進めてきた過程を、収益ゼロの月や失敗談も含めてそのままnoteに記録している。
本記事の情報は2026年9月時点のものです。財務・税務に関する具体的な判断は専門家にご相談ください。
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静岡県で倉庫会社を経営しています。年商4億円・従業員30名・創業55年のザ・中小企業です。
大学はアメリカ(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)で運動生理学を専攻して2009年卒業。卒業後は外資系医療機器メーカーで営業職として働いていましたが、14年前に家業に入社。課長・部長・専務取締役を経て、2年前に社長に就任しました。
AI活用を始めたのは約3年前。紙・Excel・電話だけで回っていた倉庫業の現場をなんとかしたいと思ったのがきっかけです。それからClaude・ChatGPTを中心に、実際の業務改善で毎日試行錯誤しています。
コンサルでも研究者でもない「普通の中小企業の社長がAIを使ってみたリアル」を発信しています。
モットーは「人生を最大限楽しむ」。好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。


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