静岡で従業員30名の倉庫会社を経営しています。倉庫業が主体で、運送は委託のみ。プログラミングは未経験で、今もコードは書けません。
そんな私が一番後悔していることがあります。それは「数字は見ていたが、数字を読んでいなかった」ことです。
月次の売上レポートを眺めながら「まあ、先月より少し落ちたな」で終わっていた。原因を深掘りする時間も余裕も、正直ありませんでした。そもそも中小企業の社長には、深掘りに付き合ってくれる相手がいません。役員会で発言すれば社内が動揺する。顧問税理士に電話するほどでもない。結局、頭の中だけで考えて、頭の中だけで決めていました。
ところがClaudeを経営の壁打ち相手として日常的に使うようになってから、同じ数字が全く違って見えるようになりました。「この数字が意味することは何か」「このまま放置するとどうなるか」を、思考の相手役として一緒に整理してくれるからです。
この記事では、現役の中小企業社長である私が、実際に生成AIをどう経営の壁打ちに使っているかを具体的に紹介します。
この記事でわかること
「月3,000円の壁打ち相手」は実現するか
中小企業の経営者には、大企業のような専任の経営企画部門がありません。財務分析も市場調査も、全部自分でやるか外部コンサルに頼むかの二択でした。コンサルに頼めば、スポット相談でも1時間あたり数万円、顧問契約なら月数十万円というのが一般的な相場感です。中小企業にとっては簡単に出せる金額ではありません。
私はClaude Proを契約しています。月額は約3,000円です。正直に言うと、「AIで月に何時間削減できたか」を厳密に計測したことはありません。だからこの記事に「実測◯時間削減」という数字は書きません。書けるのは、私が実際に何に使っているかという事実だけです。
私がClaudeを実際に使っている場面:
あわせてChatGPTも業務で使っています。役割分担はシンプルで、リサーチやデータ分析はChatGPT、じっくり考える壁打ちと文書化はClaude、という使い分けです。
金額換算の効果は示せませんが、一つ確実に言えることがあります。「社長の考え事に、深夜でも早朝でも付き合ってくれる相手」が月3,000円で手に入る、というのは経営者にとって初めての体験だということです。月次データを具体的にClaudeに分析させる手順は → AIで月次財務データを経営判断に活かす3つの実践法 をご覧ください。
実際にClaudeで経営数字を読む方法
Step 1:数字をテキストで貼り付ける
Claudeはテキストで情報を受け取ります。Excelのデータをコピーしてそのまま貼り付けるだけでOKです。
例えば月次売上データなら、こんな形で十分です(※数字は架空のサンプルです。当社の実データは非公開としています)。
月別売上(万円)※架空のサンプル
1月: 3,200
2月: 2,980
3月: 3,450
4月: 3,100
5月: 2,780
6月: 3,320
きれいに整形する必要はありません。多少ズレていてもAIは読み取ってくれます。
Step 2:「読んでほしいこと」を具体的に指示する
ここが重要です。「分析してください」だけでは漠然とした回答しか返ってきません。以下のように目的を明確にしてください。
よくない指示の例:
「この売上データを分析してください」
良い指示の例:
「この売上データを見て、①前年比の傾向、②季節性のパターン、③注意すべき月とその理由、の3点を教えてください。私は倉庫会社の社長で、この情報を来月の採用計画と設備投資の判断に使います」
自分の立場と「何のために読むのか」を添えるだけで、回答の精度がまるで変わります。これは私が使い込む中で一番効果を感じたコツです。
Step 3:「次のアクション」を聞く
分析だけでなく、「じゃあ私は何をすべきか」まで聞きましょう。
「この状況を踏まえて、来月の経営判断として優先すべき3つのアクションを教えてください」
AIは情報を整理するだけでなく、「次の打ち手」の選択肢を並べるのも得意です。並んだ選択肢を見て決めるのは自分ですが、白紙から考えるより圧倒的に速く深く考えられます。
Step 4:反論・リスクを確認する
私が必ずやるのが「この判断の反論と落とし穴を教えて」というプロンプトです。
経営者は自分の判断を正当化したくなる生き物です。社内で自分に面と向かって反論してくれる人は、正直ほとんどいません。AIに意図的に「デビルズアドボケート(反論役)」をやってもらうことで、見落としを防げます。耳の痛いことを遠慮なく言わせられるのは、人間の部下にはない利点です。
私が実際に使っているプロンプト集
以下は私が壁打ちに使っているプロンプトのテンプレートです。具体的な事業内容や数字の部分は、ご自身の状況に置き換えてください。
プロンプト①:月次レポートの解釈
以下は私の会社(倉庫会社、従業員30名)の月次データです。
[データを貼り付け]
このデータから以下を教えてください:
1. 注目すべき変化(前月比・前年比で±10%以上の変動)
2. その変化の考えられる原因(業界トレンドも考慮)
3. このまま放置した場合の3ヶ月後のリスク
4. 今すぐ取るべきアクション(優先度順)
プロンプト②:新規事業・投資の意思決定
以下の新規事業案を検討しています。
[事業内容を説明]
初期投資:○○万円
予想売上:月○○万円(Year1)
主なリスク:(自分が考えるリスクを書く)
この案について:
1. SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)
2. この投資を「やるべき理由」3つ
3. 「やめるべき理由」3つ
4. 判断を先延ばしにした場合のデメリット
を教えてください。
プロンプト③:採用判断の整理
以下の候補者について判断が難しい状況です。
[候補者のプロフィール・面接内容を説明]
採用した場合のメリット・リスク、
見逃しているかもしれないポイント、
最終判断の際に確認すべき質問を教えてください。
どのプロンプトにも共通するのは、「自分の状況」「判断の目的」「知りたい観点」の3点を明示していることです。これだけで、返ってくる答えは一般論から「自分ごとの整理」に変わります。
壁打ちの先にあるもの——私は「AIの経営企画室」まで作った
壁打ちを続けるうちに、「毎回ゼロから状況説明するのが面倒だ」と感じるようになりました。そこで私は、Claude Code(Claudeを開発者向けに拡張したツール)を使って、社内に「経営企画室」という仕組みを作りました。AIの室長がいて、その下に財務・営業・人事などの担当チームを6つ置く、という構成です。
仕組みといっても、私はコードを一行も書いていません。やったことは「うちの会社にはこういうチームが欲しい。それぞれの役割はこうだ」とAIに日本語で伝えただけです。相談すると室長役のAIが論点を各チームに振り分けて、それぞれの観点から答えが返ってくる。一人社長の頭の中に、仮想の経営会議ができたような感覚です(※この運用で扱う当社の実データは非公開のため、公開する数値例はすべて架空のサンプルと明示しています)。
AIとの付き合いは壁打ちだけにとどまりませんでした。2025年には約2,500万円をかけて自社のWMS(倉庫管理システム)を開発し、取引先から届くFAXの転記作業はAIで自動化し、来客対応のAI受付システムも自作しました。繰り返しますが、私はプログラミング未経験です。それでもここまで来られたのは、「まずAIに相談する」という壁打ちの習慣が起点になっています。
大きな投資判断ほど、着手前の壁打ちが効きます。WMSのような数千万円規模の投資は、社長が一人で抱えるには重すぎる。「やるべき理由とやめるべき理由を両方並べてくれ」とAIに何度もぶつけてから決断できたのは、精神的にも大きな支えでした。
AIに任せていい判断・いけない判断【私のルール】
任せていい(得意): 情報の整理と構造化・複数選択肢の比較・シナリオの列挙・リスクの洗い出し
自分で判断すべき(苦手): 現場の空気感・業界の非公開情報・最終決断・直感的な判断
私のルールは「AIで考え、人間で決める」。AIの分析は参考情報として使い、最終判断は自分で行います。当社の現場の空気や取引先との関係性は、AIには入力しきれません。だからAIの答えを鵜呑みにした判断は一度もしていませんし、するつもりもありません。月次売上データ・選択肢の整理・業界比較の具体的なプロンプトと出力例は → AIで月次財務データを経営判断に活かす3つの実践法 を参照してください。
コストの話——月3,000円で始まり、月3,000円で続いている
導入コスト:
これが私の実際の支出です。初期費用も解約金もありません。
「で、いくら分の効果があるのか」と聞かれると、先に書いた通り、削減時間を計測していないので誠実な数字は出せません。ただ、契約を続けている理由は明確です。
コンサルの顧問契約と同じものではありません。業界の内情や人脈はAIにはない。それでも「思考の相手役」という一点に絞れば、月3,000円は私の経費の中で最も納得感のある支出の一つです。
まずは無料版で試せます。無料版で「壁打ちが自分に合うか」を確かめてから、Proに上げるかを判断すれば十分です。
よくある質問(FAQ)
Q. 機密性の高い数字をAIに入力して大丈夫ですか?
A. 私は、特定の取引先名や個人情報は伏せた状態でAIに渡すことを徹底しています。「会社A、会社B」などと置き換えるだけで壁打ちには十分です。また、入力データの取り扱い(学習への利用可否など)はプランや設定によって異なるため、契約前にAnthropicの公式サイトで最新のプライバシーポリシーと設定項目を確認してください。
Q. AIの分析結果はどこまで信頼できますか?
A. 情報の整理・構造化は高精度ですが、具体的な数値予測(「来月の売上は〇〇万円」など)は参考程度に留めてください。AIは過去のデータパターンから推論しますが、業界固有の事情や最新トレンドを知らない場合があります。私も予測値は「一つの見方」としてしか扱いません。
Q. ChatGPTとClaudeはどちらが経営判断に向いていますか?
A. 私は両方を業務で使っています。リサーチやデータ分析はChatGPT、経営の壁打ちと文書作成はClaude、という使い分けです。壁打ちにClaudeを選んでいる理由は、①長文のデータを一度に処理できる、②指示通りに構造化された回答を出してくれる、③日本語の自然さが高い、の3点です。どちらも無料版で試してから判断することをお勧めします。
Q. 税務・法律の判断もAIに相談できますか?
A. 参考情報として使う分には問題ありませんが、税務処理や法的判断は必ず専門家(税理士・弁護士)に確認してください。AIは「一般論」は言えても、「あなたの会社の具体的なケース」の責任は取れません。私も税務は顧問税理士に確認する前の「論点整理」までしかAIに任せていません。
Q. AIを使い始めるのに専門知識は必要ですか?
A. 不要です。私自身がプログラミング未経験のまま、壁打ちから始めて社内の仕組みづくりまで進めてきました。使い始めはただ「チャット」するだけで十分です。上手い質問の仕方(プロンプト)は使いながら自然に身につきます。最初は「分析してください」だけでも始められます。
まとめ
生成AIを経営判断に使うポイントは3つです。
私にとってClaudeは「月3,000円の壁打ち相手」です。24時間対応で、文句も言わず、何度でも同じ質問に答えてくれて、社長相手でも遠慮なく反論してくれます。
まずは次回の月次レポートを眺めるとき、同じデータをClaudeにも貼り付けてみてください。きっと「こういう見方があったか」という発見があるはずです。私の場合、その小さな一歩が、AIの経営企画室やWMS開発にまでつながりました。
あわせて読みたい
📓 筆者の実録noteマガジン
この記事の筆者は従業員30名の物流会社社長。コードを1行も書かずに、AIだけで社内の仕組みづくりと副業を進めてきた過程を、収益ゼロの月や失敗談も含めてそのままnoteに記録している。
本記事の情報は2026年5月時点のものです。料金・機能は変更になる場合があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
本サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。

静岡県で倉庫会社を経営しています。年商4億円・従業員30名・創業55年のザ・中小企業です。
大学はアメリカ(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)で運動生理学を専攻して2009年卒業。卒業後は外資系医療機器メーカーで営業職として働いていましたが、14年前に家業に入社。課長・部長・専務取締役を経て、2年前に社長に就任しました。
AI活用を始めたのは約3年前。紙・Excel・電話だけで回っていた倉庫業の現場をなんとかしたいと思ったのがきっかけです。それからClaude・ChatGPTを中心に、実際の業務改善で毎日試行錯誤しています。
コンサルでも研究者でもない「普通の中小企業の社長がAIを使ってみたリアル」を発信しています。
モットーは「人生を最大限楽しむ」。好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。


コメント