この記事の要点: パワハラ防止の措置義務は2022年4月から中小企業にも適用されていますが、実務でつまずくのは制度の理解ではなく「文書を作る」工程です。方針の周知文、社内掲示、相談窓口の案内、就業規則に入れる防止規程——どれも書き慣れない文書で、後回しになりがちです。本記事では、物流業界で会社を経営する筆者が、この一式をAIで短時間で形にするプロンプトを解説します。たたき台はAI、法的な最終確認は社労士という分担が前提です。
パワハラ防止法(労働施策総合推進法)への対応は、2022年4月から中小企業も義務です。ところが実際に何をするかというと、その中身のかなりの部分は「文書を作って、配って、掲示する」という地味な作業です。
- 会社としての方針を明文化する
- それを従業員に周知する(掲示・メール・説明)
- 相談窓口を決めて、連絡先と「相談しても不利益はない」ことを知らせる
- 就業規則に防止規程と懲戒の根拠を入れる
うちも従業員30名の倉庫会社なので分かりますが、この規模の会社に法務部はありません。総務担当か社長が自分で書くしかなく、書き慣れない文書だからこそ後回しになる。この記事では、この文書一式をAIでたたき台から作る方法を、そのまま使えるプロンプトつきで書きます。
先に大事なことを1つ。AIが作るのはたたき台までです。就業規則の変更は労働基準監督署への届出や意見聴取の手続きが絡むので、最終版は必ず社会保険労務士に確認してもらってください。それでも、白紙から社労士に丸投げするのと、たたき台を持ち込んで確認してもらうのとでは、かかる時間もコストも大きく違います。
この記事でわかること
- パワハラ防止の措置義務で「作るべき文書」の一覧
- 会社の方針周知文(社内掲示・メール用)を作るプロンプト
- 相談窓口の案内文を作るプロンプト(不利益取扱い禁止の明記つき)
- 就業規則に入れる防止規程のたたき台を作るプロンプト
- AIに任せてはいけないこと(事案の判定・懲戒の判断・法的な最終確認)
措置義務で求められる「文書」を整理する
厚生労働省の指針で事業主に義務付けられている措置は、大きく次の3本柱です。
| 措置義務の柱 | 必要になる文書の例 |
|---|---|
| ①方針の明確化と周知・啓発 | 会社方針の周知文、社内掲示、就業規則の防止規程(懲戒の根拠) |
| ②相談体制の整備 | 相談窓口の案内文(連絡先・受付方法・不利益取扱い禁止の明記) |
| ③事後の迅速・適切な対応 | 相談受付票、ヒアリング記録の様式、再発防止の周知文 |
このほか、相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止を定めて周知することも求められます。ポイントは、方針や窓口は「作った」だけでは足りず「周知した」状態まで求められることです。周知されていない窓口は、措置義務を果たしたとは評価されにくい。だから文書作成が実務の中心になるわけです。
なお「何がパワハラにあたるか」は、厚労省の指針で6類型(身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)が示されています。周知文にはこの類型を具体例つきで入れると、従業員にとって自分ごとになります。
プロンプト①:会社方針の周知文(社内掲示・メール用)
まず、①の柱である会社方針の周知文です。掲示用とメール用は文体も長さも違うので、両方いっぺんに作らせます。
中小企業(従業員30名の物流会社)のパワハラ防止方針の周知文を作成してください。
【作るもの】
A. 社内掲示用(A4・1枚。休憩室に貼る想定。堅すぎず、読まれる文章で)
B. 全従業員向けメール用(社長名で送る。300字程度)
【必ず入れる内容】
・当社はパワーハラスメントを許さないという会社としての方針
・パワハラの6類型(身体的な攻撃/精神的な攻撃/人間関係からの切り離し/
過大な要求/過小な要求/個の侵害)を、職場で起こりうる短い具体例つきで
・行為者には就業規則に基づき厳正に対処すること
・相談窓口があること(連絡先は「●●」のプレースホルダーで)
・相談したことを理由とする不利益な取扱いは一切しないこと
【トーン】
・「取り締まる」より「全員が働きやすい職場を守る」という前向きな書き方
・現場スタッフが読んで分かる平易な言葉で
具体例の部分は、出てきたものを自社の業務に合わせて差し替えてください。倉庫や運送の現場なら「ミスをした部下を他の従業員の前で長時間叱責する」のような、実際にありそうな場面に直すほど伝わります。
プロンプト②:相談窓口の案内文
②の柱、相談窓口の案内です。ここで一番大事なのは連絡先そのものではなく、「相談しても不利益な取扱いを受けない」「秘密は守られる」を明記することです。これがない案内は、窓口があっても誰も使いません。
社内のハラスメント相談窓口の案内文を作成してください。社内掲示とメール配布の兼用です。
【必ず入れる内容】
・窓口の担当者と連絡先(プレースホルダー:担当●●、メール●●、電話●●)
・受け付ける相談の範囲(パワハラに限らず、セクハラ・妊娠出産等に関する
ハラスメント・職場の人間関係の悩みまで広く受け付けること)
・本人だけでなく、同僚の相談(周りで見て気になった場合)も受け付けること
・相談方法(対面・メール・電話。匿名の相談も可能なこと)
・相談者のプライバシーは守られること
・相談したこと、事実確認に協力したことを理由とする不利益な取扱いは
一切行わないこと
【トーン】
・「こんなことで相談していいのかな」をなくす、ハードルの低い書き方
・A4・1枚以内
窓口そのものを「外」に置く選択肢
ここまでは社内窓口の前提で書きましたが、小さい会社では「窓口担当=社長の側近」になりがちで、相談する側から見ると心理的なハードルが社内のままです。窓口の相手が同じ職場の人間である限り、案内文をどれだけ丁寧に書いても越えられない壁があります。
その場合は、相談窓口を外部委託して、案内文には外部窓口の連絡先を書く形にできます。自社運用と外部委託の比較や選び方は中小企業のハラスメント相談窓口の作り方【設置義務化・自社運用と外部委託の比較2026】で詳しく書いています。最近は、コンプライアンス相談窓口の外部委託に加えて従業員の退職防止支援までカバーするサービスもあり、検討する場合は自社の従業員数・予算に合うかを無料相談や資料請求で確認したうえで判断するのがおすすめです。
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プロンプト③:就業規則に入れる防止規程のたたき台
行為者に「就業規則に基づき厳正に対処する」と周知する以上、就業規則側に根拠となる規程が必要です。ここが一番「書き慣れない文書」ですが、たたき台まではAIで作れます。
中小企業の就業規則に追加する「パワーハラスメント防止規程」のたたき台を作成してください。
【条文として入れる内容】
・目的と適用範囲(正社員だけでなくパート・派遣にも適用)
・パワーハラスメントの定義(労働施策総合推進法と厚労省指針の6類型に沿って)
・禁止行為
・相談窓口の設置と、相談者・事実確認協力者への不利益取扱いの禁止
・相談があった場合の会社の対応(事実確認、被害者への配慮措置、
行為者への措置、再発防止)
・懲戒:違反者は就業規則第●条(懲戒規定)に基づき処分する旨
・プライバシーの保護
【条件】
・条文形式(第1条、第2条…)で
・このたたき台は社会保険労務士の確認を前提とする旨を冒頭に注記
出てきた条文は、そのまま施行せず、必ず社労士に確認してください。就業規則の変更には従業員代表の意見聴取と労働基準監督署への届出が必要で、既存の懲戒規定との整合も専門家の目が要ります。たたき台を持ち込めば、社労士との打ち合わせは「ゼロから相談」ではなく「この案でいいかの確認」になり、話が早くなります。
プロンプト④:年1回の再周知とセットの文書
周知は一度やって終わりではありません。人は入れ替わるし、掲示は風景になります。年1回、方針を再周知するのが現実的な運用で、その文面もAIで数分です。
パワハラ防止方針の「年次の再周知メール」を作成してください。
【前提】
・初回の周知から1年経過。新入社員も増えた
・社長名で全従業員へ送る。400字程度
【入れる内容】
・方針は変わらず継続していること
・相談窓口の連絡先の再掲(プレースホルダー可)
・この1年の相談実績には触れない(件数の公表はしない)
・「何かあったら早めに」のトーンで、構えさせない書き方
新入社員向けには、入社時の説明資料に方針と窓口案内を1ページ入れておくと、周知の抜けがなくなります。なお、管理職向けにパワハラ防止の社内研修まで踏み込む場合、研修資料そのものの作り方は社内研修の資料をAIで作る方法【カリキュラム・スライド構成・演習問題・理解度テストまで】に書いています。
AIに任せてはいけないこと
- 実際の事案の判定:「この行為はパワハラにあたるか」を、実名や具体的な事案を貼り付けてAIに判定させてはいけません。判断は事実確認のうえで会社が行い、迷う場合は社労士・弁護士に相談してください
- 懲戒処分の判断:処分の重さは過去の処分例との均衡や手続きの適正が問われる領域です。AIの出力を根拠に処分を決めるのは論外です
- 就業規則の最終確認:規程のたたき台はAIで作れますが、施行前の確認は社労士の仕事です。届出・意見聴取の手続きも含めて専門家に任せてください
- 相談内容の入力:従業員から受けた相談の内容を、そのままAIに貼り付けるのはプライバシーの観点でNGです。様式や対応フローの整備にAIを使い、個別事案の情報は入れないでください
よくある質問(FAQ)
Q. 従業員10人未満の会社にもパワハラ防止の義務はありますか?
A. あります。パワハラ防止の措置義務は2022年4月から企業規模を問わず適用されており、従業員数による適用除外はありません。なお就業規則の作成・届出義務は常時10人以上の事業場が対象ですが、10人未満でも方針の明文化・周知と相談窓口の整備は必要です。
Q. 周知文や規程を作らないと罰則はありますか?
A. 直接の罰金や刑事罰はありませんが、行政の助言・指導・勧告の対象になり、勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。実務上はそれ以上に、実際にトラブルが起きたときに「会社として措置を怠っていた」と評価されると、損害賠償請求などで会社側が不利になるリスクのほうが大きいと考えるべきです。
Q. 周知はメールを1回送れば足りますか?
A. メール1回だけでは弱いです。指針では方針の「周知・啓発」が求められており、掲示・配布・研修などを組み合わせて、従業員が実際に知っている状態を作ることが重要です。本記事のプロンプト①のように掲示とメールをセットで作り、年1回の再周知(プロンプト④)まで運用に組み込むのが現実的です。
Q. 相談窓口の案内文で一番大事なことは何ですか?
A. 「相談しても不利益な取扱いを受けない」「秘密は守られる」を明記することです。窓口の連絡先だけ書かれた案内では、従業員は「相談したら社内でどう扱われるか」が不安で使えません。あわせて、匿名相談の可否や、本人以外(周りで見て気になった同僚)からの相談も受け付けることを書くと、窓口が実際に機能しやすくなります。
まとめ
- パワハラ防止の措置義務は、実務としては「文書を作って周知する」工程が中心
- 方針の周知文・窓口の案内文・就業規則の防止規程・年次の再周知は、すべてAIでたたき台が作れる
- 窓口案内は「不利益取扱いの禁止」と「秘密が守られること」の明記が生命線
- 就業規則の規程は、AIのたたき台 → 社労士の確認 → 届出、の分担で進める
- 事案の判定・懲戒の判断・相談内容の入力はAIに任せない
文書一式のたたき台なら、この記事のプロンプトで今日中に形になります。まずプロンプト①の周知文から作って、社労士に見せる準備を始めてみてください。
📓 筆者のnote実録マガジン
この記事の筆者(物流会社社長・プログラミング未経験)が、AIだけで受付システムやFAX自動転記などの社内の仕組みと副業ブログを作った過程を、うまくいった話も収益ゼロの月もそのままnoteに記録しています。導入回と実プロンプト回は無料です。
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この記事の筆者は従業員30名の物流会社社長。コードを1行も書かずに、AIだけで社内の仕組みづくりと副業を進めてきた過程を、収益ゼロの月や失敗談も含めてそのままnoteに記録している。
本記事の情報は2026年8月時点のものです。パワハラ防止法(労働施策総合推進法)や厚生労働省指針に関する事項は、厚生労働省等の一次情報および社会保険労務士等の専門家にてご確認ください。
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静岡県で倉庫会社を経営しています。年商4億円・従業員30名・創業55年のザ・中小企業です。
大学はアメリカ(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)で運動生理学を専攻して2009年卒業。卒業後は外資系医療機器メーカーで営業職として働いていましたが、14年前に家業に入社。課長・部長・専務取締役を経て、2年前に社長に就任しました。
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コンサルでも研究者でもない「普通の中小企業の社長がAIを使ってみたリアル」を発信しています。
モットーは「人生を最大限楽しむ」。好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。


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