この記事の要点: 社内研修で一番重いのは、当日の講義ではなく教材の準備です。カリキュラム・スライド・演習問題・理解度テストと、作るものが多く、講師役の社員の残業で成り立っているのが多くの中小企業の実態です。AIを使うと、この教材づくりを「ゼロから書く仕事」から「たたき台を直す仕事」に変えられます。本記事では、物流会社を経営する筆者が、そのまま使えるプロンプトとともに解説します。
※この記事は、新人研修・安全研修・業務スキル研修など、テーマを問わず「研修の教材・資料づくり」をAIで軽くする方法を扱います。「従業員にAIの使い方を教える研修」を設計したい方は、中小企業の従業員AI研修の設計方法【ChatGPT・Claudeを社内で活用させる手順】をご覧ください。
「来月、新人向けの研修やっといて」
この一言の裏で何が起きるか。任された社員は、通常業務の合間にカリキュラムを考え、スライドを作り、練習問題をひねり出す。結局、前日の夜までかかる——。中小企業の研修は、教える内容そのものより「教材を作る時間」がボトルネックになっていることが多いんです。講師役に指名されるのは現場のエース社員なので、その残業は会社として一番高くつく残業でもあります。
AIはここで効きます。研修教材は「対象者・目的・時間」が決まれば構造がほぼ決まる定型文書の集まりなので、たたき台づくりはAIの得意分野そのもの。人間は「自社の実例を足すこと」と「中身が正しいかの確認」に集中できます。
この記事でわかること
- 研修のカリキュラム・タイムテーブルをAIで組むプロンプト
- スライド構成と講師用台本のたたき台を作るプロンプト
- 自社の業務場面を演習問題・ケーススタディに変えるプロンプト
- 理解度テストと振り返りシートの作り方
- AIに任せてはいけないこと(内容の正確性・著作権・受講者の評価)
研修資料が「作られない・使い回されない」理由
| よくある状態 | 何が問題か |
|---|---|
| 講師役の社員が通常業務の合間に作る | 準備が前日夜にずれ込み、質も安定しない |
| 毎回ゼロから作る | 過去の資料が個人のPCに眠り、会社の資産にならない |
| 座学だけで演習がない | 聞いて終わり。現場で使えるかが確認されない |
| 実施した記録が残らない | 誰が何の研修を受けたか説明できない |
順に、AIでどう軽くするかを見ていきます。
STEP1:カリキュラムとタイムテーブルを組む
まず全体設計です。「対象者・目的・時間」の3点を渡すのがコツです。
社内研修のカリキュラムを設計してください。
【条件】
・テーマ:(例)電話応対とビジネスマナーの基礎
・対象者:入社1年目の社員○名(現在のレベル感を1〜2行で)
・時間:半日(3時間・休憩込み)
・ゴール:研修後に受講者が「1人でできるようになっていること」を3つ設定したい
【出力】
1. ゴール3つの案(測定できる形で)
2. タイムテーブル(説明・演習・振り返りの配分つき。説明が連続30分を超えない構成で)
3. 各パートで使う教材の一覧(この後AIで作る前提で)
ポイントは「ゴールを測定できる形で先に決めさせる」ことです。ゴールが曖昧な研修は、内容がどれだけ立派でも「いい話を聞いた」で終わります。また「説明が連続30分を超えない」の縛りで、講義一辺倒の眠い研修を構成の段階で防げます。
STEP2:スライド構成と講師用台本を作る
カリキュラムが決まったら、パートごとに教材化します。
カリキュラムの「パート2:電話の受け方(40分)」のスライド構成と講師用台本を作ってください。
【出力】
1. スライド構成案(1枚ごとに、見出し+載せる内容の箇条書き。文字だらけのスライドにしない)
2. 講師用の台本(話し言葉。スライド1枚ごとに、話すこと+受講者への問いかけを1つ以上)
3. 受講者に配る1枚もののまとめ(A4・箇条書き中心)
【条件】
・専門用語には最初に出たときだけ短い説明を付ける
・「〜すべきです」の連続ではなく、悪い例→良い例の対比で見せる
台本まで作っておくと、講師経験のない社員でも研修を任せられるようになります。属人化しがちな「教えるスキル」を文書にする発想です。スライドをPowerPointに落とし込む具体的な手順は、社内資料作成にClaude/ChatGPTを使う手順【PowerPoint・Word・Excelも対応】にまとめています。
STEP3:自社の業務場面を演習問題・ケーススタディにする
研修の質を分けるのは演習です。そして演習は、市販教材の架空の例より、自社で実際に起きる場面を使ったものが圧倒的に効きます。
研修用のケーススタディを3つ作ってください。
【場面の材料】(自社で実際にあった場面を、個人名・取引先名を伏せて2〜3行で書く)
・例:午前中の忙しい時間帯に、納品時間の変更依頼の電話。担当者は外出中で、電話を受けた新人が「わかりました」とだけ答えて切ってしまい、変更が現場に伝わらなかった
【出力・各ケースについて】
1. 状況設定(受講者に配る形で)
2. 「あなたならどうするか」の問い
3. 議論のポイント(講師用。想定される答えと、深掘りする追加の問い)
4. この場面での正解例と、やってはいけない対応
材料にする場面は2〜3行のメモで十分です。AIが研修用の体裁に膨らませてくれます。現場のヒヤリハットを安全研修のKYT例題に変える同じ発想の使い方は、運送・物流会社の安全教育ネタをAIで作る方法【安全会議の台本・KYT例題・ヒヤリハット活用】で詳しく書いています。
STEP4:理解度テストと振り返りシート・実施記録
締めくくりの教材もまとめて作ります。
この研修の理解度テストと振り返りシートを作ってください。
【出力】
1. 理解度テスト10問(選択式7問+記述式3問。ひっかけではなく、ゴール3つに対応させて)
2. 解答と、間違えやすいポイントの解説(講師用)
3. 受講者の振り返りシート(明日から自分の業務でやること1つを書かせる欄を必ず入れる)
4. 実施記録のテンプレート(実施日・講師・受講者・テーマ・使用教材)
テストは受講者を評価するためではなく、「研修で伝わらなかった箇所」を講師側が見つけるために使うのがおすすめです。正答率の低い問題は、教材側を直すサインです。できあがった教材一式を次回も使える形で整備・保管するルールづくりは、AIでマニュアル・手順書を作る方法【属人化を解消・Claudeプロンプト全文付き】が参考になります。
AIに任せてはいけないこと
- 内容の正確性の確認:法令が絡む研修(労務・安全・コンプライアンス等)や技術的な内容は、AIのたたき台を鵜呑みにせず、一次情報や専門家で確認してください。もっともらしい間違いが混ざります
- 自社ルールとの整合:AIは一般論の「正解」を出してきます。自社の実際のルール・手順と食い違う箇所は必ず出るので、現場を知る人の確認を挟んでください
- 外部教材の丸写し:市販テキストや外部研修の資料をそのままAIに渡して「再構成して」とやるのは著作権上の問題があります。材料にするのは自社の業務・自社の事例だけにするのが安全です
- 受講者の個人評価:理解度テストの結果をAIで分析するのは構いませんが、それを人事評価に直結させる使い方は慎重に。テストの目的は教材の改善です
よくある質問(FAQ)
Q. スライドのデザインまでAIで作れますか?
A. 構成と中身のたたき台まではこの記事のプロンプトで作れます。PowerPointへの流し込み・体裁づくりは別の手順が必要なので、社内資料作成の記事の手順を使ってください。社内研修なら、デザインは最小限で中身と演習に時間を使うほうが効果的です。
Q. 講師をやったことのない社員に任せて大丈夫でしょうか?
A. STEP2の講師用台本と「議論のポイント(講師用)」まで用意すれば、進行はかなり安定します。最初の1回は経験者が後ろで見てフォローする形にすると、講師役も育ちます。教える側が一番学ぶので、若手の育成としても有効です。
Q. 外部研修と内製研修はどう使い分ければいいですか?
A. 自社の業務・ルールに根ざした内容(業務手順・自社の顧客対応・安全)は内製が向き、専門性や資格が絡む内容は外部が向きます。AIで教材づくりが軽くなると内製の守備範囲が広がるので、「外部研修で学んだ内容を自社向けに落とし込む研修」を内製する、という組み合わせも現実的になります。
Q. 毎年同じ研修をやっています。資料の更新もAIでできますか?
A. できます。昨年の資料と「今年変わった点」(ルール変更・新しい失敗事例など)を渡し、「変更点を反映して改訂版を作ってください。変えた箇所の一覧も出してください」と頼むと、更新作業が数時間から数十分になります。変更箇所の一覧を出させるのが、確認を楽にするコツです。
まとめ
- 研修のボトルネックは当日ではなく教材づくり。AIで「ゼロから書く」を「たたき台を直す」に変える
- カリキュラムは「対象者・目的・時間」から。ゴールを測定できる形で先に決めさせる
- 講師用台本まで作れば、講師経験のない社員にも任せられる
- 演習は自社の実例をケース化したものが一番効く。材料は2〜3行のメモで十分
- 内容の正確性・自社ルールとの整合・著作権・受講者の評価はAIの外に置く
次の研修の予定が決まっているなら、まずSTEP1のプロンプトに「対象者・目的・時間」を入れてみてください。カリキュラムのたたき台が数分で出てくるだけで、準備の重さはまったく変わります。
📓 筆者のnote実録マガジン
この記事の筆者(物流会社社長・プログラミング未経験)が、AIだけで受付システムやFAX自動転記などの社内の仕組みと副業ブログを作った過程を、うまくいった話も収益ゼロの月もそのままnoteに記録しています。導入回と実プロンプト回は無料です。
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本記事の情報は2026年7月時点のものです。法令が関わる研修内容は、必ず一次情報および専門家にてご確認ください。
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静岡県で倉庫会社を経営しています。年商4億円・従業員30名・創業55年のザ・中小企業です。
大学はアメリカ(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)で運動生理学を専攻して2009年卒業。卒業後は外資系医療機器メーカーで営業職として働いていましたが、14年前に家業に入社。課長・部長・専務取締役を経て、2年前に社長に就任しました。
AI活用を始めたのは約3年前。紙・Excel・電話だけで回っていた倉庫業の現場をなんとかしたいと思ったのがきっかけです。それからClaude・ChatGPTを中心に、実際の業務改善で毎日試行錯誤しています。
コンサルでも研究者でもない「普通の中小企業の社長がAIを使ってみたリアル」を発信しています。
モットーは「人生を最大限楽しむ」。好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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