「AIに何を聞けばいいかわからない」
これが中小企業でAIが普及しない最大の理由です。AIツール自体は誰でも使えますが、「何をどう聞くか(プロンプト)」のコツを知らないと、期待外れのアウトプットが続いて使うのをやめてしまいます。
私は静岡県で従業員30名の倉庫会社を経営している現役の社長です。Claudeを経営の壁打ち・社内マニュアル作成・ブログ運営に毎日使い、ChatGPTも業務で併用しています。この記事では、その中で「これは中小企業の経営者が本当に使える」と感じたプロンプトを10個に厳選して公開します。すべてコピペして使えます。
なお、10個のうち私の会社で実際に運用しているものには「私の会社ではこう使っている」と明記し、まだ試していないものは一般的な提案として紹介します。使ってもいないことを「使っている」とは書きません。その線引き自体が、AI活用の記事を読むときの信頼性の目安になると思うからです。
この記事でわかること
筆者がAIを毎日使うようになった経緯
先にプロンプトだけ知りたい方は、この章を飛ばして次の「良いプロンプトの3条件」へ進んでください。
私はプログラミング未経験です。それでも2025年には約2,500万円をかけて自社の倉庫管理システム(WMS)を開発し、FAXで届く伝票の転記作業をAI-OCRで自動化し、AIを使った受付システムも自作しました。さらに現在は、Claude Codeで「経営企画室」と呼んでいる複数のAIチームを回しています(社内の実データは非公開のため、この記事に出てくる数値例はすべて架空のサンプルです)。
ここまでやってわかったのは、システム開発よりも先に、まず「聞き方」を覚えるほうが圧倒的にコストパフォーマンスが高いということです。プロンプトはお金がかかりません。今日からできて、失敗してもやり直せます。この記事の10個は、私がその「聞き方」を試行錯誤する中で残ったものです。
良いプロンプトの3条件
① 役割を与える:「あなたは〇〇の専門家です」と設定する
② 具体的な条件を書く:「〇〇字以内で」「箇条書きで」「3点にまとめて」
③ 出力形式を指定する:「表形式で」「メール文として」「手順書形式で」
悪いプロンプトの典型は「議事録を作って」「メールを書いて」のような一言指示です。これだとAIは前提を勝手に想像で埋めるので、出てくる文章は「それっぽいが自社では使えないもの」になります。
逆に、①〜③を埋めた指示なら、AIの想像の余地が減り、初回から実務レベルに近い文章が出てきます。以下の10個のプロンプトは、すべてこの3条件を最初から組み込んだ「穴埋め式のテンプレート」になっています。【 】の中を自社の情報に書き換えるだけで使えます。
プロンプト10選
プロンプト①:議事録作成
以下の会議メモから議事録を作成してください。
【会議の目的】:
【参加者】:
【メモ内容】:(ここに会議メモを貼り付け)
出力形式:
■ 決定事項(箇条書き)
■ 保留・検討事項(箇条書き)
■ 次のアクション(担当者・期限付き)
■ 次回会議の予定
私の会社ではこの用途で実際に使っています。 運用の流れは「会議をスマホのボイスメモで録音 → 文字起こし → 文字起こしテキストをClaudeに貼り付けて議事録に整形」です。この一連の作業は社長の私ではなく担当者が回しています。ポイントは、文字起こしの生テキストは言い間違いや脱線だらけでも構わないことです。「決定事項」「次のアクション」という出力形式を指定しておけば、AIが要点だけを拾って構造化してくれます。
議事録は「書くのが面倒だから後回しにされ、結局書かれない」書類の代表です。テンプレートを一つ決めて担当者に渡すだけで、この問題はほぼ解消します。
プロンプト②:ビジネスメール作成
以下の状況でビジネスメールを書いてください。
【送り先】:(例:取引先A社の田中部長)
【関係性】:(例:5年以上の取引関係・丁寧な間柄)
【目的】:(例:納期を1週間延長してほしいというお願い)
【理由】:(例:資材調達の遅延)
【トーン】:(例:丁寧・誠実・謝罪を含む)
【文字数】:300字以内
件名も含めて出力してください。
使いどころ:謝罪・お願い・断りなど、書くのに気を遣うメールの下書きに最適です。
コツは【関係性】の欄です。同じ「納期延長のお願い」でも、10年来の付き合いがある相手と新規取引先とでは適切な文面がまったく違います。関係性を1行入れるだけで、出てくる文章の温度感が大きく変わります。
プロンプト③:クレーム対応メール
以下のクレームに対する回答メールを作成してください。
【クレームの内容】:(相手からのクレーム内容を貼り付け)
【状況】:(例:配送遅延が発生した・弊社に非がある)
【方針】:(例:誠意を持って謝罪・再発防止策を提示)
【避けたいこと】:言い訳・責任転嫁・感情的な表現
件名と本文を出力してください。
クレーム対応の文章は、当事者が書くとどうしても防御的になりがちです。AIに一度下書きさせる最大の価値は「感情を挟まない第三者の文章」が手に入ることです。【避けたいこと】に「言い訳・責任転嫁」と明記しておくのは、AIが状況説明を長々と書いて結果的に言い訳っぽくなるのを防ぐためです。出てきた下書きを読んで、事実関係と自社の対応方針だけ確認して整えれば、感情的なやり取りに発展するリスクを大きく減らせます。
プロンプト④:求人票作成
以下の情報を元に求人票を作成してください。
【職種】:
【雇用形態】:正社員 / パート / 契約社員
【給与】:
【勤務地】:
【業務内容】:(箇条書きで)
【求める人材】:
【会社の強み・魅力】:
出力形式:
- 仕事内容(400字以内)
- 求める人材像(200字以内)
- 当社の特徴・魅力(300字以内)
中小企業の求人票は「業務内容:倉庫内作業全般」のような一行で済まされがちですが、求職者はその一行から仕事を想像できません。このプロンプトの肝は【会社の強み・魅力】の欄です。経営者が当たり前だと思っていること(転勤なし・平均勤続年数が長い・資格取得支援があるなど)が、求職者には魅力として響くことがよくあります。箇条書きで思いつく限り書き出してAIに文章化させると、「自社の魅力の棚卸し」にもなります。
プロンプト⑤:社内マニュアル作成
以下の業務手順を社内マニュアル(新人向け)として整理してください。
【業務名】:
【現在の手順(箇条書き)】:
【注意点・よくあるミス】:
【使用するシステム・ツール】:
出力形式:
- 業務の目的(1文)
- 手順(Step形式・番号付き)
- 注意事項(箇条書き)
- よくある質問と回答(3問)
新人が一人でできるようなわかりやすい言葉で書いてください。
私の会社ではこの用途で実際に使っています。 社内マニュアルづくりはClaudeの日常的な用途の一つです。実感として大きいのは、マニュアル作成の本当のハードルは「文章を書くこと」ではなく「ベテランの頭の中を言葉にすること」だという点です。手順を知っている人に箇条書きでラフに書き出してもらい、それをこのプロンプトに貼るだけで、新人が読める形に整います。「よくある質問と回答(3問)」を出力形式に入れてあるのは、AIが手順の穴(初心者がつまずきそうな箇所)を質問の形で先回りして埋めてくれるからです。
プロンプト⑥:契約書・書類の要点チェック
添付した文書を読んで、以下の点について教えてください。
1. この文書の要点を5つ以内で箇条書きにまとめる
2. 特に注意が必要な条項・表現を指摘する
3. 一般的な同種の文書と比べて不利な点があれば教える
4. 疑問点や確認が必要な箇所をリストアップする
※これは情報収集のための参考意見です。最終的な法的判断は専門家に確認します。
使いどころ:PDFをClaudeにアップロードして使います。長い文書を扱う場合はClaude Proプランが安定します。
これは「AIに契約を判断させる」プロンプトではありません。専門家に相談する前に、どこを質問すべきかを知るための下ごしらえです。契約書を丸ごと顧問弁護士や社労士に投げるより、「第◯条のこの表現が不利ではないか」と論点を絞って相談するほうが、回答も早く、相談時間も有効に使えます。末尾の一文(法的判断は専門家に確認する)は消さずに残してください。AI自身にも「参考意見である」という前提で回答させるための一文です。
プロンプト⑦:経営判断の整理
以下の経営判断について、メリット・デメリット・リスクを整理してください。
【検討内容】:(例:新しい倉庫を借りるかどうか)
【現状】:(例:現在の保管能力が90%に達している)
【選択肢】:
A:新倉庫を借りる(月50万円追加)
B:現状のまま受注を制限する
C:外部倉庫を一時利用する(変動費)
各選択肢について以下を整理してください:
- メリット
- デメリット
- 3ヶ月後・1年後のリスク
- 推奨度(あなたの意見)
※例の中の数値は架空のサンプルです。
私の会社ではこの用途で実際に使っています。 いわゆる「経営の壁打ち」です。経営者の意思決定は、社内に相談相手がいないまま一人で抱えることが多い。AIに選択肢を並べて整理させると、自分が無意識に除外していた選択肢(上の例ならC案のような中間案)が出てくることがあります。
大事なのは、最後の判断は必ず自分ですることです。AIの「推奨度」はあくまで議論の相手役です。私は「AIの推奨と自分の直感が食い違ったとき」こそ価値があると感じています。なぜ食い違うのかを考える過程で、自分の判断の前提が言語化されるからです。
プロンプト⑧:スタッフへの伝達文作成
以下の内容を全スタッフへの社内通知文として書いてください。
【伝えたい内容】:(例:来月から残業の事前申請が必要になる)
【理由】:
【実施日】:
【質問の窓口】:
トーン:わかりやすく・高圧的にならず・理由をきちんと説明する
長さ:400字以内
社内通知は「決定事項だけを短く書くと高圧的に見え、丁寧に書こうとすると長くなって読まれない」というジレンマがあります。このプロンプトは【理由】を必須項目にしているのがポイントです。ルール変更の通知で反発が起きる原因の多くは、内容そのものではなく「理由の説明がないこと」です。トーン指定に「高圧的にならず」と入れておくと、命令調の文がやわらかい依頼調に変換されます。
プロンプト⑨:競合調査のまとめ
以下の情報から、競合他社との比較分析をまとめてください。
【自社情報】:
【競合A情報】:
【競合B情報】:
出力形式:
- 比較表(価格・サービス内容・強み・弱みを列にする)
- 自社の差別化ポイント(3点)
- 今後強化すべき点(3点)
注意点が一つあります。競合の情報は自分で集めて貼り付けてください。「◯◯社について調べて」とAIに丸投げすると、古い情報や不正確な情報が混ざるリスクがあります。競合のWebサイトや料金表など、自分で確認した一次情報を貼り付けて「整理と比較」だけをAIに任せるのが安全な使い方です。情報収集はあくまで人間、構造化はAI、という分担です。
プロンプト⑩:報告書・提案書の下書き
以下の情報から、経営会議向けの報告書(1枚)を作成してください。
【テーマ】:(例:AI導入による業務効率化の進捗報告)
【期間】:(例:2026年4月〜5月)
【主な成果】:(数値で)
【課題・問題点】:
【来月の目標・施策】:
出力形式:
■ 概要(100字以内)
■ 成果(箇条書き・数値付き)
■ 課題(箇条書き)
■ 来月の方針(3点)
報告書づくりで時間を食うのは、内容を考えることより「体裁を整えること」です。メモ書きレベルの素材(成果・課題・来月やること)さえ用意すれば、A4一枚の体裁はAIが数十秒で作ります。「概要100字以内」の制約を入れているのは、報告書の冒頭が長いと読まれないからです。忙しい会議では概要しか読まれないことを前提に、概要に一番大事な結論を書かせます。
プロンプトのカスタマイズ方法
上記プロンプトを自分の業界・会社に合わせてカスタマイズするコツです。
AIへの指示は一度で完璧を求めなくて大丈夫です。会話のように修正を加えていくことで、自分の目的に合ったアウトプットになります。
もう一つ、私が実際にやっているコツを付け加えます。うまくいったプロンプトは必ず保存しておくことです。同じ業務は必ず繰り返し発生します。議事録なら議事録の「当たりプロンプト」を一度作ってしまえば、次回からは貼り付けるだけです。メモアプリでも社内の共有フォルダでも、置き場所はどこでも構いません。「プロンプトを書く」から「プロンプトを使い回す」に移行した瞬間に、AI活用は個人のスキルから会社の仕組みに変わります。
よくある質問(FAQ)
Q. ClaudeとChatGPT、どちらのプロンプトでも使えますか?
A. はい。今回紹介したプロンプトはどちらでも使えます。私自身も両方を業務で使っています。ただし、長い文書を読ませる場合(プロンプト⑥など)はClaudeが有利な場合があります。
Q. プロンプトを社内でシェアしていいですか?
A. もちろんです。むしろ社内でプロンプトを共有・改善していくことで、組織全体のAI活用レベルが上がります。
Q. うまいプロンプトを作る練習方法はありますか?
A. 「同じ目的で3種類のプロンプトを書いて比べる」のが最速の練習法です。どの書き方が一番良いアウトプットを出すか実験してください。
Q. プロンプトに社名・個人名を入れても大丈夫ですか?
A. 機密性の高い情報(未公開の財務数値・個人情報・取引先の内部情報など)の入力は慎重にしてください。各サービスのプランによってデータの取り扱い設定は異なるため、業務利用するなら、契約前に利用規約とデータ利用の設定を必ず確認することをおすすめします。迷ったら「社外秘の書類をそのまま貼らない・固有名詞は伏せ字にする」を社内ルールにしておくと安全です。
Q. 社長自身がプロンプトを書くべきですか?それとも担当者に任せるべきですか?
A. 最初は社長が自分で使ってみることを強くおすすめします。「何が便利で何が物足りないか」を体感してから担当者に展開すると、指示が具体的になります。私の会社でも、まず私自身がClaudeを日常的に使い、その後に議事録などの定型業務を担当者の運用に移しました。順番が逆(いきなり担当者に丸投げ)だと、社長がAIの実力を知らないまま指示することになり、たいてい定着しません。
まとめ
中小企業のAI活用を始めるための3ステップ:
プロンプトは「書けば書くほど上手くなる」スキルです。この10個を出発点に、自社に合ったプロンプトを育ててください。
私の会社も、最初の一歩は特別なシステムではなく「Claudeに聞いてみる」ことでした。そこから議事録の運用が担当者に移り、マニュアルづくりが日常になり、やがて自社システムの開発にまでつながりました。出発点は誰でも同じ、コピペ一回分の距離です。
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📓 筆者の実録noteマガジン
この記事の筆者は従業員30名の物流会社社長。コードを1行も書かずに、AIだけで社内の仕組みづくりと副業を進めてきた過程を、収益ゼロの月や失敗談も含めてそのままnoteに記録している。
本記事の情報は2026年5月時点のものです。
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静岡県で倉庫会社を経営しています。年商4億円・従業員30名・創業55年のザ・中小企業です。
大学はアメリカ(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)で運動生理学を専攻して2009年卒業。卒業後は外資系医療機器メーカーで営業職として働いていましたが、14年前に家業に入社。課長・部長・専務取締役を経て、2年前に社長に就任しました。
AI活用を始めたのは約3年前。紙・Excel・電話だけで回っていた倉庫業の現場をなんとかしたいと思ったのがきっかけです。それからClaude・ChatGPTを中心に、実際の業務改善で毎日試行錯誤しています。
コンサルでも研究者でもない「普通の中小企業の社長がAIを使ってみたリアル」を発信しています。
モットーは「人生を最大限楽しむ」。好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。


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