この記事の要点: 棚卸しで一番時間を取られるのは、現物を数える作業そのものではなく、その前後——計画・帳票の準備と、差異が出た後の原因調査・報告です。AIは現物を数えることはできませんが、この「前後の事務」は大幅に軽くできます。本記事では、倉庫会社を経営する筆者が、棚卸し計画づくりから差異リストの分析、報告書の作成まで、そのまま使えるプロンプトとともに解説します。
棚卸しの日が近づくと、憂うつになる人は多いはずです。
うちは倉庫会社なので、棚卸しは避けて通れない定例の実務です。そして毎回思うのは、大変なのは「数える日」そのものではなく、その前後だということ。事前のロケーション表や担当割の準備、当日の段取り、そして終わった後に必ず出てくる「帳簿と現物が合わない」の調査と報告。ここに時間が溶けていきます。
現物を数える作業はAIには代われません。でも、計画書・カウント表・差異分析・報告書という「紙とデータの仕事」は、AIの得意分野そのものです。この部分をAIに寄せるだけで、棚卸しの負担は目に見えて変わります。
この記事でわかること
- 棚卸しのどの工程がAIで軽くなるか(数える以外の全部)
- 棚卸し計画書・注意事項をAIで作るプロンプト
- カウント表・チェックリストをExcel×AIで整えるプロンプト
- 差異リストをAIに分析させ、原因調査を早く終わらせる方法
- 棚卸し報告書と「来期の改善策」までAIで作る手順
棚卸しはなぜ重いのか
| 工程 | 何が大変か |
|---|---|
| 事前準備 | ロケーション表・担当割・タイムテーブル・帳票づくり。毎回ゼロから作りがち |
| 当日 | カウントの進捗が見えない。新人への説明が口頭頼み |
| 差異調査 | 帳簿と実棚の突合。どこから手を付けるか決まらないまま総当たり |
| 報告 | 差異の理由を聞かれるが、説明できる形に整理されていない |
数える工程以外は、すべて「文書・表・分析」の仕事です。つまり4工程のうち3工程はAIで軽くできるということです。順番に見ていきます。
STEP1:棚卸し計画書と当日の注意事項をAIで作る
まず計画づくりから。自社の条件を渡して、計画書のたたき台を作らせます。
倉庫の実地棚卸の計画書を作ってください。
【条件】
・対象:常温倉庫1棟(ラック保管+平置き)、アイテム数は約○○品目
・実施日:○月○日(土)8:00〜17:00、入出荷は前日で止める
・人員:○名(うち棚卸し初参加が○名)
・方法:2人1組で、数える係と記録係に分ける
【出力】
1. タイムテーブル(開始ミーティング〜終了報告まで)
2. エリア別の担当割の考え方(数えやすい区切り方の提案)
3. 初参加者向けの注意事項(数え方のルール、迷ったときの動き方)
4. 当日の持ち物・準備物リスト
ポイントは、初参加者向けの注意事項まで出させることです。「開封済みの端数はどう数えるか」「貼り紙のある保留品はどうするか」といった毎回口頭で説明していたルールが文書になるので、当日の質問対応が減ります。できあがったルールを毎年使い回せる手順書に整えるなら、AIでマニュアル・手順書を作る方法【属人化を解消・Claudeプロンプト全文付き】の手順がそのまま使えます。
STEP2:カウント表・チェックリストをExcel×AIで整える
当日使う帳票も、AIに設計させると早いです。
実地棚卸で使うカウント表(Excel)の設計を提案してください。
【条件】
・列:ロケーション/品目コード/品名/帳簿数量/実数(手書き欄)/差異/カウント者/確認者
・差異列は「実数−帳簿数量」を自動計算し、差異ありの行が目立つ条件付き書式にしたい
・シートはエリア別に分け、全体の進捗(記入済み行の割合)が先頭シートで見えるようにしたい
条件付き書式と進捗集計の関数、設定手順を教えてください。
関数や条件付き書式は、自分で調べるよりAIに聞くほうが圧倒的に早い領域です。エクセル操作の指示の出し方はChatGPT・ClaudeでExcelを自動化する方法【プロンプトで関数・マクロを即生成】で詳しく書いています。
STEP3:差異リストをAIで分析する(ここが本丸)
棚卸しで一番つらいのは、終わった後に出てくる差異の調査です。差異リストを前に「どこから調べるか」が決まらないまま、1件ずつ総当たりで記憶をたどる——これが時間を溶かします。
差異リストをAIに渡すと、調査の優先順位がつきます。
以下は倉庫の実地棚卸で出た差異リストです。原因調査の準備として分析してください。
1. 差異を「品目の種類」「ロケーション」「入出荷頻度」の3つの軸で分類し、偏りがあれば指摘
2. 差異のパターンを推定(例:似た品番同士の取り違え、単位の数え間違い〈ケースとバラ〉、記録漏れの可能性など)
3. 金額影響の大きい順に並べ替え
4. それぞれについて「現場で確認すべきこと」をチェックリスト形式で
注意:原因を断定せず、あくまで「確認すべき仮説」として出してください。
(差異リストを貼り付け:品目コード/品名/帳簿数量/実数/差異/単価/ロケーション)
コツは、AIに原因を断定させず「確認すべき仮説のリスト」を出させることです。似た品番が隣のロケーションにある、差異が特定の棚に偏っている、プラスとマイナスの差異が同数量で対になっている(=取り違えの典型)——こういうパターンは、人が1件ずつ見ていると気づきにくく、AIが一覧で見ると一発で出てきます。総当たりだった調査が「仮説の確認」に変わるので、かかる時間がまるで違います。
そして差異の原因がつかめたら、次はそもそも差異を生まない在庫管理です。発注や入出荷記録の精度をAIで上げる方法はAIで在庫管理・需要予測を改善する方法【発注の無駄と欠品を減らすClaude活用/物流社長の実践】にまとめています。
STEP4:棚卸し報告書と改善策をAIで作る
調査が終わったら、報告書もAIに整えさせます。
実地棚卸の報告書を作ってください。A4・1〜2枚で、経営層向けです。
【渡す情報】
・実施日・対象・参加人数
・棚卸し結果(帳簿数量合計・実数合計・差異件数・差異金額)
・差異の原因分類(調査で確定したもの/不明のまま処理したもの)
【出力】
1. 結果サマリー(差異率を含む)
2. 差異の主な原因と、確認できた事実
3. 来期に向けた改善提案(原因分類に対応させて)
4. 添付資料の一覧
盛った表現は使わず、渡した数字と事実のみで書いてください。
「盛った表現は使わない」の一文は入れておくのをおすすめします。放っておくと、中身のない立派な文章で埋めてくるからです。原因分類と改善提案が対応した報告書になっていると、翌年の棚卸しが楽になる投資(ロケーション表示の改善、記録ルールの見直しなど)の稟議も通しやすくなります。
AIに任せてはいけないこと
- 現物の数の確定:実数はあくまで現場でのカウントが正です。AIにできるのは記録の整理と分析まで。数え直しの要否も、最後は現物を見て決めてください
- 会計・税務上の処理の判断:棚卸し差異の損失処理や評価方法は会計・税務の論点です。AIの回答を根拠にせず、顧問税理士に確認してください
- 原因の断定:STEP3で書いたとおり、AIが出すのは仮説です。現場確認をせずに「取り違えだろう」で処理すると、翌期も同じ差異が出ます
- データの渡し方:差異リストに取引先名や仕入単価が含まれる場合は、渡す前に必要な列だけに絞るなど、社外に出してよい範囲を確認してから使ってください
よくある質問(FAQ)
Q. 一斉棚卸ではなく循環棚卸(サイクルカウント)でも使えますか?
A. 使えます。むしろ循環棚卸のほうが「今週はどのエリアを数えるか」の計画づくりと、差異傾向の蓄積分析でAIの出番が多いです。STEP3のプロンプトに「過去の差異履歴」も一緒に渡すと、差異が出やすい品目・棚から優先的に回す計画が作れます。
Q. 在庫管理システム(WMS)がなく、Excel台帳だけでも使えますか?
A. 使えます。この記事のプロンプトはすべてExcelの表を貼り付ける前提で書いています。逆にWMSがある場合は、差異リストをCSVで出力してそのまま渡せばよいので、さらに手間が減ります。
Q. 差異の原因がどうしても見つからないときは?
A. 一定額以下は「原因不明」として処理ルールを決めておくのが現実的です。大事なのは、不明のまま処理した差異も記録に残しておくこと。翌期の棚卸しでSTEP3のプロンプトに過去分として渡すと、繰り返し出ている不明差異のパターンが見えてくることがあります。
Q. 小売や飲食の店舗の棚卸しにも使えますか?
A. 考え方はそのまま使えます。計画→カウント→差異分析→報告の流れは倉庫と同じです。店舗の場合は、POSレジの在庫データと連動させると日常の在庫管理ごと楽になります。
まとめ
- 棚卸しの4工程(準備・当日・差異調査・報告)のうち、数える以外の3工程はAIで軽くできる
- 計画書と注意事項をAIで文書化すると、当日の口頭説明と質問対応が減る
- 本丸は差異分析。AIに「断定ではなく確認すべき仮説」を出させると、総当たりの調査が仮説確認に変わる
- 報告書は原因分類と改善提案を対応させて作ると、翌年を楽にする改善の稟議が通しやすい
- 現物の確定・会計処理の判断・原因の断定はAIの外に置く
次の棚卸しの前に、まずSTEP1の計画書プロンプトを自社の条件で動かしてみてください。毎回ゼロから作っていた段取りが文書で残ること自体が、来年の自分への一番の引き継ぎになります。
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この記事の筆者(物流会社社長・プログラミング未経験)が、AIだけで受付システムやFAX自動転記などの社内の仕組みと副業ブログを作った過程を、うまくいった話も収益ゼロの月もそのままnoteに記録しています。導入回と実プロンプト回は無料です。
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本記事の情報は2026年7月時点のものです。棚卸し差異の会計・税務上の処理は、必ず顧問税理士等の専門家にご確認ください。
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静岡県で倉庫会社を経営しています。年商4億円・従業員30名・創業55年のザ・中小企業です。
大学はアメリカ(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)で運動生理学を専攻して2009年卒業。卒業後は外資系医療機器メーカーで営業職として働いていましたが、14年前に家業に入社。課長・部長・専務取締役を経て、2年前に社長に就任しました。
AI活用を始めたのは約3年前。紙・Excel・電話だけで回っていた倉庫業の現場をなんとかしたいと思ったのがきっかけです。それからClaude・ChatGPTを中心に、実際の業務改善で毎日試行錯誤しています。
コンサルでも研究者でもない「普通の中小企業の社長がAIを使ってみたリアル」を発信しています。
モットーは「人生を最大限楽しむ」。好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。


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