事業計画書は、銀行融資・補助金・創業・社内の方針づくりと、出番が多い書類です。それなのに、いざ作ろうとすると「何をどの順で書けばいいのか」「数字の根拠をどう示すのか」で手が止まります。私自身、白紙のフォーマットを前に何時間も固まった経験があります。
私は物流・倉庫業の会社を経営しています。車両の入れ替えや設備投資で融資を受ける場面、補助金に申請する場面で事業計画書を作ってきましたが、ゼロから書くのではなく、AI(Claude / ChatGPT)に骨子と下書きを作らせてから自分で直すようにしてから、作成時間が大きく減りました。
この記事は、資金調達の選び方(融資・制度融資・ファクタリングの比較)が「どこから調達するか」の記事なのに対し、こちらは事業計画書そのものを、構成・財務3表・想定問答までAIでどう作り込むかに絞って解説します。融資だけでなく、補助金・創業・社内計画にも使える共通の型です。
この記事でわかること
- 事業計画書の基本構成(融資・補助金・創業に共通する9要素)
- 骨子→各セクション深掘り→財務計画の順でAIに作らせる3ステップとプロンプト全文
- 融資・補助金の審査で評価される書き方のコツ(数字の根拠・一貫性)
- 財務3表(損益・資金繰り・貸借)の数値計画をAIで下書きする方法
- AIに任せていい範囲と、必ず人間(経営者・税理士・金融機関)が確定すべき範囲
事業計画書は「誰に・何のために」で中身が変わる
同じ事業計画書でも、読み手によって重視される点が違います。最初にここを決めないと、AIに頼んでも的外れな文章が出てきます。
- 銀行融資・日本政策金融公庫向け:返済できるかが最大の関心。根拠のある売上計画と資金繰り、返済原資が明確かが見られる
- 補助金向け:補助事業の目的・効果・実現性。「補助金がなぜ必要か」「どんな成果が出るか」を制度の趣旨に沿って書く
- 創業(これから起業)向け:実績がない分、経験・市場性・自己資金で説得力を出す
- 社内・経営計画向け:従業員と方向性を共有するための、わかりやすさ重視
AIに依頼するときも、冒頭で「誰向けの事業計画書か」を必ず伝えます。これだけで出力の精度が変わります。
事業計画書の基本構成(9要素)
融資・補助金・創業のどれでも、土台になる要素はほぼ共通です。
- 事業概要(何をやる会社か・3行で)
- 経営者の経歴・実績(信頼の根拠)
- 事業の背景・課題(なぜこの事業か)
- 商品・サービスの内容と強み
- 市場・顧客・競合(誰に売るか・なぜ選ばれるか)
- 販売・マーケティング計画(どう売るか)
- 実施体制・スケジュール
- 財務計画(売上・利益・資金繰り・投資回収)
- 資金計画(いくら・何に・どう返すor活かすか)
この9要素を「箱」として用意し、各箱をAIで埋めていくイメージです。
AIで事業計画書を作る3ステップ
ステップ1:骨子(9要素のたたき台)を一気に作る
まず全体像をAIに作らせます。実在の自社情報だけを渡すのがコツです(架空の実績を盛らない)。
あなたは中小企業の融資・補助金に詳しい経営コンサルタントです。
以下の自社情報をもとに、銀行融資向けの事業計画書の骨子を、
次の9項目の見出しごとに箇条書きで作ってください。
各項目は事実ベースで、誇張や架空の数字は入れないでください。
不足している情報は「要確認」と明記してください。
【自社情報】
・業種:(例)一般貨物自動車運送業・倉庫業
・所在地/設立年/従業員数:
・直近の売上規模・主要取引先の傾向:
・今回の資金使途:(例)大型トラック2台の入れ替え
・必要額・希望返済期間:
・経営者の経歴:
【9項目】
1.事業概要 2.経営者の経歴 3.背景・課題 4.商品・サービスと強み
5.市場・顧客・競合 6.販売計画 7.実施体制・スケジュール
8.財務計画 9.資金計画
「要確認」と返ってきた箇所が、自分で埋めるべき急所です。AIは枠とたたき台を作り、判断と事実は人間が入れる——この分担が基本です。
ステップ2:弱いセクションを深掘りさせる
骨子のうち、特に審査で見られる「市場・競合」「強み」「販売計画」を個別に強化します。
次の自社の強みについて、銀行・補助金の審査担当者が
「具体的で説得力がある」と感じる書き方に整えてください。
抽象的な表現(高品質・丁寧な対応 など)は、
できるだけ具体的な事実・数字・仕組みに置き換える案を提示してください。
事実が不明な部分は、私が埋めるべき「質問リスト」として出してください。
【今の下書き】
(ステップ1で出た強みの記述を貼る)
ポイントは、AIに「質問リスト」を作らせることです。何を具体化すれば説得力が増すかが分かり、自分で事実を埋めれば、捏造せずに密度の高い計画書になります。
ステップ3:財務計画(数値計画)の下書きを作る
審査でいちばん重く見られるのが財務計画です。ここはAIに前提を渡して計算の枠組みと表を作らせ、実数は自分(と会計データ・税理士)で確定します。
以下の前提で、3期分の簡易財務計画のたたき台を表形式で作ってください。
数字はあくまで前提に基づく試算で、確定値ではないことを明記してください。
楽観・標準・保守の3パターンの売上で、営業利益と返済可能額の目安も示してください。
【前提(例示・自社の数字に置き換える)】
・現状の年間売上:◯◯万円/粗利率:◯◯%
・固定費(人件費・地代・リース等)月額:◯◯万円
・新規投資:トラック2台 ◯◯万円/耐用年数◯年
・借入希望:◯◯万円/返済期間◯年/想定金利◯%
・売上の見込み根拠:(既存取引の増加・新規開拓 など)
出力:①損益計画(売上・粗利・固定費・営業利益)
②返済計画(毎月返済額・返済原資)③前提の一覧
ここで出てくるのは「たたき台」です。実際の数値は、クラウド会計の実績データを基準に置き換えると、絵に描いた餅になりません。過去の月次実績をエクスポートしてAIに渡せば、現実的なレンジで計画を組めます。
融資・補助金で評価される書き方のコツ
AIの下書きを、審査で通る形に仕上げるための観点です。
- 数字に根拠をつける:「売上が伸びる」ではなく「既存A社の取引が◯◯増・新規◯社で◯◯円」と分解する
- 計画全体の一貫性:強み→販売計画→売上→資金計画が一本の線でつながっているか。AIに「矛盾がないかチェックして」と最後に通すと抜けが見つかる
- 保守的な数字も併記:楽観だけの計画は逆に信用されない。標準・保守シナリオがあると堅実に見える
- 専門用語を盛らない:読み手(融資担当・審査員)が一読で理解できる平易さ
最後に、計画書全体をAIに読ませて「融資担当者の立場で、不安に感じる点・追加で聞きたくなる点を5つ挙げて」と質問すると、面談前の弱点つぶしになります。
物流業での実際(経営者の視点)
物流・倉庫業は、車両・設備という大きな投資が定期的に発生し、燃料費や人件費の変動も大きい業種です。だからこそ、事業計画書では「なぜ今この投資が必要か(老朽化・増車・2024年問題対応)」「投資後にどう返済原資を生むか」を具体的に書く必要があります。
私の場合、AIに骨子と財務のたたき台を作らせ、数字は会計データと過去の運賃・稼働実績で裏取りし、最後に税理士に見てもらう、という流れにしています。ゼロから書くより速く、かつ根拠の薄い「願望の計画書」になりにくいのが利点です。
なお、事業計画の前提になる「数ヶ月先に資金が薄くなる月」を先に把握しておくと、資金計画の精度が上がります。やり方は資金繰り表をAIで作る・先読みする方法にまとめています。
財務計画の精度は「会計データ」で決まる
事業計画書の財務計画は、思いつきの数字では審査を通りません。出発点になるのは過去の実績データです。クラウド会計を使っていれば、月次の売上・粗利・固定費を整った形でエクスポートでき、それをAIに渡すだけで「現実的なレンジの計画」を組めます。
逆に、帳簿が紙やExcelでバラバラだと、計画の前提づくりに何日もかかります。事業計画書を「作れる体制」にしておくこと自体が、融資や補助金の準備になります。会計ソフトの選び方はfreee会計とマネーフォワードの違いで比較しています。
注意点(AIに任せていいライン)
- 数字は必ず実績で確定する:AIが出すのは前提に基づく試算。決算データ・税理士の確認なしに提出しない
- 架空の実績・取引を書かない:盛った計画は面談で必ず崩れる。事実だけで組み立てる(信頼性が最優先)
- 融資の可否・条件は金融機関が判断する:本記事や補助金の採択を保証するものではない
- 補助金は制度ごとに様式・要件が違う:公募要領に沿うのが大前提。AIの汎用フォーマットをそのまま流用しない
- 機密情報の扱い:取引先名や未公開の数字を外部AIに渡す際は、自社のルールと各サービスの規約を確認する
AIは「白紙を埋める下ごしらえ」と「抜け・矛盾のチェック」に強く、最終的な判断・事実確認は人間がやる。この線引きを守れば、事業計画書づくりは確実に楽になります。
よくある質問(FAQ)
Q. AIが作った事業計画書をそのまま提出していいですか?
A. いいえ。たたき台として使い、数字は実績で確定し、事実関係を自分で確認してから提出してください。そのまま出すと、面談で説明できない箇所が出ます。
Q. 創業前で実績がありません。それでもAIで作れますか?
A. 作れます。実績の代わりに、経営者の経歴・自己資金・市場性で説得力を出す構成にAIへ指示してください。架空の売上実績を作るのは厳禁です。
Q. 補助金と融資で、同じ事業計画書を使い回せますか?
A. 土台(9要素)は共通ですが、補助金は公募要領の様式・評価項目に合わせる必要があります。AIに「この公募要領の評価項目に沿って整えて」と要領の要点を渡すと精度が上がります。
Q. どの程度の文字量・ページ数が必要ですか?
A. 提出先の様式によります。日本政策金融公庫の創業計画書のように所定フォーマットがある場合はそれに従い、自由形式なら要点が伝わる範囲で簡潔にします。
Q. 財務計画の数字に自信がありません。
A. 過去の会計実績を基準にし、楽観・標準・保守の3パターンで幅を持たせると現実的になります。最終的には税理士や金融機関に相談して確定してください。
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まとめ
事業計画書は、AIに「骨子→深掘り→財務計画」の順で下書きさせ、数字と事実を人間が確定する流れにすると、ぐっと作りやすくなります。
- 誰向けの計画書かを最初に決める(融資・補助金・創業で重視点が違う)
- 9要素の箱を用意し、AIにたたき台と「質問リスト」を作らせる
- 財務計画は会計実績が出発点。試算はAI、確定は人間(税理士・金融機関)
- 架空の数字を盛らない——事実だけで組むのが、結局いちばん通る
白紙で固まる時間をなくし、根拠のある計画書を作る。その下ごしらえにAIは十分に役立ちます。
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静岡県で倉庫会社を経営しています。年商4億円・従業員30名・創業55年のザ・中小企業です。
大学はアメリカ(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)で運動生理学を専攻して2009年卒業。卒業後は外資系医療機器メーカーで営業職として働いていましたが、14年前に家業に入社。課長・部長・専務取締役を経て、2年前に社長に就任しました。
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